会山行紀行文  09.06.13(土)〜14日(日) NO.44 巻機山での実りある研修
リダー・一般登山研修会 1866 S/T

≪日  時≫ 6月13日(土)10:00〜17:00 室内研修 
         6月14日(日) 7:00〜15:30 巻機山&室内研修
≪場  所≫ 民宿・雲天(室内教室&宿泊)、巻機山井戸尾根コース
≪講  師≫ 国際山岳ガイド&文科省登山研修所講師:長岡健一先生
≪参加者≫ 25名(男19名・女6名)

 新潟楽山会のリーダーは現在約50名います。会員の中から、ある一定の山経験や統率力、計画力などを総合的に判断して任命されています。選ばれたリーダーが、それぞれにコース選定から参加者募集、実施に至るまでの会山行全体を引っ張っています。こうした会山行が年間150〜170件ほど実施されています。
 リーダーは会山行を実施するについては、非常に神経を使い、参加者の皆さんにより満足して頂こうと頑張っています。しかし、過去にあまりリーダー研修を実施したことが少なく、勢い自己流で判断したり問題に直面して悩む事も多々あります。こんな視点から、リーダーの資質を上げ、より安全でより楽しい山行を目指して「リーダ研修会」が行われました。

先生の研修スタイルは一方的な講話の形でなく、講師と研修生の双方向の質問とか対話を通じて行うものでした。
それだけに、疑問点はすぐ確認できるし理解度も高くなる、非常に内容の濃い研修となりました。

以下に記憶に残るポイントを整理してみます。
最初に、山では自分の考えを言い、互いにディッスカッションしてメンバー全員のコンセンサスを得ることが大切。いろんな意見があって当然であり、それらを否定しないでディスカッションの中から結論を導き出すのが大切。疲れても言いにくい雰囲気だと、つい無理を重ねてしまい、最終的に皆に迷惑が及ぶ。話し易い雰囲気つくりが大切と強調されました。

【1】運動生理学
@疲れない歩きかた。
a・日頃のトレーニング(ウォーキングよりも階段昇降が有効。ねんざし易い人は座布団の上で片足バランス訓練。腰痛は腹筋運動が有効。) 
b・ゆっくり歩く(下りに急ぐと筋肉痛、登りゆっくりであればどこまでも歩ける。18cm以上の段差は極力登らない。ストック2本で体力40%軽減できる・・・・etc。最大心拍数の70〜75%で歩く) 
c・水分補給(夏場は水だけでは筋肉がつる。塩分補給にスポーツドリンクは有効。素早く吸収するハイポトニックが有効。 エネルギー消費量(体重×行動時間×5Kcal)必要エネルギーの半分は朝食で摂ろう)
d・足がつった場合の対処(冷え、水分不足、塩分不足、急に激しい運動が原因。筋肉を冷やして休める、足の親指を持ちあげる。)
 
【2】ポイントレスキュー(実際にテープや三角巾を使って研修)
a・捻挫の場合のテーピング(足首が腫れないうちにテーピング。腫れてしまえば靴の上からテーピング。程度がひどい場合は骨折の疑いあり、救助依頼する)
b・三角巾の使い方(特に手と頭部の三角巾の使い方。止血方法について実技指導。流水に勝る処置なし。)
c・スズメバチ対策(一匹でも見たら静かに去る。逃げたり素早い動きは逆効果。黒い色に反応する)
 
【3】地図・コンパスの見方、使い方
a・自分の位置確認の5つの原則(尾根か沢か、ユニークの発見など)
b・自分の位置、見たい方向、知りたい方向の出し方(ベアリングの仕方)
c・誤差の容認(等高線は10m間隔なので10m以下の起伏は表示されない事を理解する。地図とコンパスはよく間違うもの、方向と距離をよく掴むこと。)
d・1/25000図では距離1cm=250m 4cm=1kmを覚えること。
e・1/25000図では等高線間隔による傾斜1mm=22度 2mm=11度 0.5mm=39度 5mm=5度。

【4】ザイル・シュリンゲ操法
ザイルを使って、実際の操法を研修した。
ザイルは7mm・7mがもっとも実用性が高く、有効である。あまり細いと体に食い込み痛い。長さもこれより短いのは使えない。
ザイルの結び方などは、難しい方法を無理に覚えなくても、もっと簡単に現場で使い易い方法を研修した。
 
【5】現地実技研修
14日は、生憎の霧雨だったが、巻機山井戸尾根コースに出掛けて、実際のグランドにおける研修を行った。
登山を開始するに当たってするべき事(員数確認、装備の確認、ターゲットの山の概略説明、危険個所の注意・おおよその所要タイムなど)の研修。また、ほどけにくい靴ひもの結び方なども教わりました。
地図とコンパスによるベアリングの仕方や現在地の確認方法、目的地への導き方の実際。また、効果的なストックの使い方や段差の登り方なども実際の現場で指導された。
この後、現場を想定してのザイルワークに入る予定でしたが、残念ながら雨脚が強くなってきたので、再び民宿に戻っての座学となりました。
 
【6】キネシオテープの使い方
キネシオテープの貼り方について、実際に貼ってみての指導となりました。
痛くなる前、または痛み始めたら貼ることが大切。また、貼る作業においては、決して引っ張らない事などを学びました。
 


 今回の研修は、食事時間も削るほどの熱心さで取り組んで頂き、たくさんの事を習いました。
どの項目をみても、長年の研究に裏打ちされ、世界中の山岳に登っている長岡先生の豊富な現場体験に基づくだけに、説得力のあるものでした。また、知識を詰め込むような指導でなく、実際の現場ですぐ役にたつ技術や知恵を教えて頂きました。
中には、今まで自分達が正しいと信じていた事も、もう一度見直さなければならないような事柄もありました。
今回勉強した事を一人でも多くの会員に伝え、より安全でより楽しむ山行へのステップにしたいと思います。また、こうした研修は一度だけではなかなか身につかないもの、今後は継続した研修制度を取り入れる必要性も感じました。

 長岡先生には、この研修の数日後にはまた外国に向かわれる由、忙しく世界を飛び回っておられます。自分たちと幾つも違わない年齢ながら、年を感じさせない若々しさ。今回は実りある研修をありがとうございました。 
健康に気をつけて、更なる活躍をされるように祈りたいと思います。             (おわり)